« 井の頭公園の冬のサクラ | トップページ | 左持ち手の急須と片手キーボード »

2004.01.29

襟裳海岸の昆布漁と日露戦争

2002.09.24 12:32.JPG

むかし北海道の襟裳岬の営林署官舎にゆえあってご厄介になっていた頃の話である。小高い丘の上から見る、夏の襟裳海岸の朝3時はまだ薄暗かった。昆布漁が始まる前の海岸には100隻を越える手漕ぎ船が並んで、出発の合図に長老が旗を振るのを待っていた。広い海岸線に展開した3人の長老が旗を振るのを合図に、船は一斉に沖を目掛けて漕ぎ出し昆布が集まって生えているところに急ぐ。
昆布は海岸線に沿って均等に生えている訳ではないが、100隻を越える船は海岸線に均等に並んで昆布出漁の準備をする。海岸には、採ってきた昆布をすぐさま乾すため綺麗な小石を並べ、家族が待機している。皆、自分の家の前の海岸にこうして舟と敷石を準備するのである。
やがて水平線から上がってくる真っ赤な太陽に照らし出された海には、先を争って漕いでいるたくさんの舟が光を浴びて浮かび上がり、その勇ましい姿がはっきりと見えてくる。数ヶ所に別れて、集まった舟が舷側を接して昆布を採り始めている。昆布のあるところは限られた場所なので舟が集中してくる。全く舟がいない場所の下には昆布が生えていないのである。
舟同士が接触したり、採った昆布の荷が偏たりして1隻でも転覆すると、長老が全100隻に停船を命じてその小舟を救助する。救助し終わったのを見届けた長老は、また旗を揚げて昆布採りを再開させるのである。
私はこの情景を「日本海海戦」の絵のようだと心に刻んで、今も思い出している。子供の頃に見た「日本海海戦」の絵とそっくりに見えたからである。だが、日本海海戦前後の日本のことについては、その当時も以後も知ることがなかった。
最近、散歩の途中に寄った吉祥寺のブックス ルーエで「日露戦争」(もう一つの「物語」)長山靖生・新潮文庫に出合った。薄い200ページの本を手に取って見ると「今、戦争について考えている。戦争そのものというより、戦争という事態を前にして昂揚するさまざまな心の動きに、私はこだわりを覚える。そこでは、」と続くまえがきを読んだ。
日本海海戦のイメージによって呼び起こされる心象風景は何なのか、この本から辿れるのではないかと感じ即座に買い求めることにした。
まだ90ページ程しか読んでないので日本海海戦には到達していない。だが「表現者」という新たな概念も知った。たくさんの著名な小説家や文学者がかかわっていることも知った。簡潔な年表と合わせて読み進めると、日本海海戦の新たな絵を知ることが出来るだろう、と今思っている。

|

« 井の頭公園の冬のサクラ | トップページ | 左持ち手の急須と片手キーボード »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12847/147702

この記事へのトラックバック一覧です: 襟裳海岸の昆布漁と日露戦争:

« 井の頭公園の冬のサクラ | トップページ | 左持ち手の急須と片手キーボード »