« 雲取山登山で受けた凍傷の克服記-2 | トップページ | 雲取山登山で受けた凍傷の克服記-4 »

2004.02.28

雲取山登山で受けた凍傷の克服記-3

凍傷になって水泡の出来ている手の指先、足の指先と踵、耳たぶのうち、針を刺し始めたのがどこの水泡からだったか、全く覚えていない。
最初に真っ黒い糸をつけた針が水泡の厚い皮膚を刺し貫いたとき、針穴から滲みでてきた漿液は腐った匂をだしていたが、全く痛みはなかった。もう自分の皮膚ではなくなっているという感じであった。かさぶたを取ったときのような感じに似て、その後が気持ち良かったような気がする。
最初は母が、次は私がそのまねをして針を水泡に刺し貫いた。真っ黒い桐炭椿油をつけた長い糸をゆっくりと引き抜いていく。水泡の中の腐った黄色い漿液を身体の外に出して、水泡の中に真っ黒い桐炭椿油を充填するのである。
私は何度もこれをくり返し、全ての水泡の漿液が完全に桐炭椿油と置き替わるまで続けた。こうして置き換える前の黄色い指先は薄黒い指先へと替わっていった。踵だけは水泡の古い皮膚が厚く、黒い色にはならなかったように思う。
黄色くなって腐った匂いのする漿液が身体の外に出されると、私の心と身体は蘇ったような気分に包まれていったことを、かすかに覚えている。

|

« 雲取山登山で受けた凍傷の克服記-2 | トップページ | 雲取山登山で受けた凍傷の克服記-4 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/12847/243038

この記事へのトラックバック一覧です: 雲取山登山で受けた凍傷の克服記-3:

« 雲取山登山で受けた凍傷の克服記-2 | トップページ | 雲取山登山で受けた凍傷の克服記-4 »