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2004.05.29

ラビ・バトラ 新世紀の大逆転」を読む-12

04.5.28 08:17.JPG

第2章の中の「「日本が失いつつあるものは取り戻せる」においてラビ・バトラはいう。「二倍の広さをもつ住宅は、今の日本が失いつつあるものを取り戻すに違いない。家族の絆、あるいは家族を大切に思う心が失われつつある昨今である。しかし広い居住空間が確保できれば、二世代、三世代家族が同居でき、これによって、日本の伝統的な家族のあり方は再び蘇ることだろう。」と。

続けてラビ・バトラはいう。「日本という国家は、世界でも稀な豊かさを達成した。素晴らしい高速道路、身のまわりを埋めつくす装飾品や贅沢品の山、一家に一台を越える自動車の普及、しかし、これまで決定的に欠けていたのは、物質的にも精神的にも快適な住空間にほかならなかった。」と。そして「あまりの単純さに吹き出す読者もいるかもしれないが、経済とは本来単純であるべきものなのである。人間にとっての重要な価値観、あるいは課題はそこから復活してくると私は考えている。」と。
ラビ・バトラは願いをこめていう。「政府のとるべき道は、富裕者たちの欲を満たすことではない。労働者たちの本当の幸せを実現することにある。日本はプラウト的な国家である。国家の威厳を取り戻し、今一度そのパワーを世界に示すことが、日本の大きな役割といえるだろう。恩師サーカーはいみじくも言った、日本は再び日出ずる国となるのだと。私は心から日本のこの復活を願わないではいられない。」と。
私は私の観点から考えてみたい。まず私が思い出すのは、第二次世界大戦に敗れた戦後の東京・新宿で見た、あたり一面の焼け野原の姿である。いま新宿は、ビルの建ち並ぶ大都会となっている。
当時、家を建てる建築材のほか教科書や新聞などの用紙にするパルプを作るためために、多量の木材が必要であった。時の政府林野当局は国有林の伐採に反対していた。農林大臣の河野一郎は外国から木材を輸入することに踏み切り、財界と話をつけて外洋船から港の貯木場までを整え、国有林の伐採を避けて外国の木材による復興を促進したのである。
この丸太の輸入の決断は、その後さまざまな影響を日本にもたらしているが、建築材とパルプの需要を満たすことによって戦後復興に大きな功績を残したのである。戦後復興そのものが巨大な需要であり市場であった。
2004年に至ってみると、日本は巨大市場を海外に求めて国内には求めてもいないことがわかる。そして、ラビ・バトラがいうように住宅空間の規模もほとんど大きくなっていない。
この時、国内に巨大市場を求めて住空間の大規模開発を提案し推し進めることは、まことに当を得た歴史の流れとなるかもしれない、と私は思う。
海外からの丸太輸入によって極度に疲弊した日本の山林の姿が、ここに来て衆目を集めるようになってきている。この山林の回復のために必要な木材の伐採、搬出と手入れの費用は、搬出した材からの収入で行わなければならないが、その収入(費用となっていたのを訂正)からはとうてい賄うことができない。
戦後の復興期に伐らなかった日本の山林は、更に営々と長年にわたって植え続けてきたまま放置されている。いまこそ貯蓄した山林の木材を、新たな日本の住空間の拡大に心して使うべき時なのだ、と私は思う。
政府が住空間の確保のための住宅建設に、国産材の使用を義務づけて一連の各種政策を行えば、環境の保全という国民の財産の創出も夢ではない、と私は思う。
今日はこれまで。

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コメント

 大きな住宅、賛成です。私は大きな家で育ちました。掃除をするのもほとんどは自分たちでしたから、とても大変、子供のころはこんな大きな家はいやだと思っていたものです。しかし、中年になってから、やはり、空間の大切さを実感しています。大きな家、大きな家族に囲まれて育っている人は、たとえ、大人になってから小さな家に住むことになっても、何かが違うように思われます。相手との距離の置き方、つながりの保ち方など、家族同士でも外の人に対しても、こういうところに差があるような気がします。核家族とその住宅事情、ニートの出現割合、なにか関連があるかもしれません。
 大きな家政策が本当に実現したら、内需拡大という利益も生じるでしょうが、それよりも、日本人がその本来の良さと心の余裕を取り戻せるのではないでしょうか。あるいは、小さい家でもいいから、コミュニティーの一部分に個人が居場所を作れるような社会、つまり、外とうちの境界を緩くするような住宅、昔の下町ですね、これがいいのではないかと考えています。

投稿: ななし | 2008.02.19 16:12

> 風 さん
コメントいただきありがとうございました。家が大きくなると物を買うと私も思います。日本の場合家は家具付きでないので、家具の引っ越しは大変ですが、いい引っ越し屋も多そうなので大丈夫でしょう。大きい家を政策的に建設していくなんて、日本人の発想からはなかなか出てこないと思いました。特区でいいからどこかの県や市で実験してもらいたいですね。

投稿: kojima | 2004.11.16 00:02

家の大きさで景気が良くなるという事は実体験からも納得できます。最近35坪の一軒家から25坪のマンションに引っ越したのですが、押入れの奥などに何十年も動かしてない様な物もあって、結局3分の1の荷物はおいて行くしかありませんでした。つまり逆の場合は絶対物が増えると思います。そんな政策は面白そうなんで実験的にでもして欲しいです。

投稿: 風 | 2004.11.15 19:36

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